グリース過給脂で発熱|正しい給脂
カラカラより、あふれるほど入れた方がいいんでしょ・・・?
多くのプラントでは多種多様な潤滑油やグリースが使用されています。流動性があり冷却効果の期待できる潤滑油は大きな機械や熱管理を必要とする機械で使用されます。一方、グリースが使われるアプリケーションの代表例はモータや小形のファンやギヤボックスなどの軸受です。
グリースは不可逆的に劣化することから、解放形の軸受では定期的なグリースアップ(再給脂)が必要ですが、正しく給脂できていますでしょうか?
グリース不足も問題。でも、過給脂も大問題。
転がり軸受の軌道面(内輪或いは外輪)と転動面(転動体)の間には潤滑が必要です。そのため、潤滑が不足することは絶対に避けたいと思う一方、グリース給脂を行う際、十分な適正給脂量を理解していたり、どの程度、グリースが入っているのかを確認することができなかったりするため、グリースを多めに入れるという場面をよく目にします。
しかし、軸受にとってグリースの過給脂はこれも大きな問題です。特に回転数が高い機械や大きな軸受であるほど、つまりその2つに相当する回転数と軸受内輪内径の積であるdN値が大きいほど、過給脂による影響は大きくなると言われています*。 * 出典:「図解初めての機械の潤滑(似内昭夫)」
グリース過給脂の場合、潤滑剤が機械部品の動きにより剪断される際に発生するエネルギーにより攪拌熱を発生させます。摩擦により機械エネルギーが熱エネルギーに変換されるものであり、エネルギー保存則の基礎を作ったイギリスのジェームズ・プレスコット・ジュールが19世紀、水中で羽根車を回転させる実験を通じ、機械的仕事が熱に変換されることを示したものに通じます。
グリースは潤滑油と異なり、冷却効果や熱伝導性が低いことからこの攪拌熱が大きく問題になります。
攪拌熱の発生メカニズム:
- 過剰充填:潤滑剤が適正量を超えて充填されると、機械部品の動作中に余分な潤滑剤が強く攪拌されます。
- 剪断作用:この攪拌により、潤滑剤内部で高い剪断応力が生じ、分子間の摩擦が増加します。
- 熱エネルギーの発生:増加した摩擦により、機械的エネルギーが熱エネルギーに変換され、潤滑剤および周囲の温度が上昇します。
攪拌熱によるグリース劣化とその特徴:
攪拌熱の影響で潤滑剤の温度が上昇すると、以下のような劣化現象が発生します:
- 酸化:高温により酸化反応が促進され、潤滑剤の化学的性質が変化します。
- 増ちょう剤の分解:グリースの増ちょう剤が分解し、硬化や分離が生じます。
- 粘度の変化:基油の粘度が低下し、潤滑性能が損なわれます。
これらの劣化により、潤滑剤は以下のような特徴を示すようになります:
- 色の変化:通常、褐色や黒色に変色します。
- 油分の分離:グリースから油分が滲み出し、分離が見られます。
- 硬化や軟化:グリースが硬くなったり、逆に柔らかくなったりします。
対策:
攪拌熱による劣化を防ぐためには、以下の点に注意が必要です:
- 適正量の充填:潤滑剤はメーカーの推奨量を守って充填し、過剰にならないようにします。
- 定期的な点検:潤滑剤の状態を定期的に確認し、劣化の兆候があれば交換します。
- 適切な潤滑剤の選定:使用環境や機械の特性に適した潤滑剤を選ぶことで、劣化を最小限に抑えます。
これらの対策を講じることで、攪拌熱による潤滑剤の劣化を防ぎ、機械の寿命を延ばすことが可能です。


